相続登記をしたら、営業のDMが届いた…?―受付帳の仕組みが変わります

【更新日】2025年7月24日

「相続登記をしたら、急に不動産会社から営業の電話がきた」

「相続の手続きが終わったら、DMがたくさん届くようになった」

こうした経験をされた方は、実は少なくありません。

その背景にあるのが、法務局の「受付帳」という仕組みです。

📖 受付帳とは?

登記を申請すると、法務局では「受付帳」という帳簿に、

申請内容を記録します。これは誰でも無料で閲覧できる情報でした。

具体的には、以下のような情報が載っていました:

記載されていた内容

受付年月日 2024年4月10日

登記の目的 所有権移転

登記の原因(登記簿上) 相続(※登記簿には記載あり。受付帳には載らないことが多い)

不動産の所在地 東京都〇〇区〇〇町〇番地

この情報から、「あの家で相続登記がされたらしい」といったことが第三者にも簡単にわかってしまう状態だったのです。

この情報が営業リストに悪用されていました

実際に、登記後すぐに営業電話やDMが届いたという相談が多く寄せられています。

一部の業者は、この受付帳をチェックして、

「最近、相続があった物件」や「不動産の名義変更があった土地」を探し、

営業に利用していたのです。

東京司法書士会が行ったアンケートでは、

司法書士の約4割が、受付帳に関する苦情や問い合わせを受けた経験があると回答しています。

私自身も、そうした経験があります。

🆕 2025年10月から受付帳の内容が変わります

こうした懸念を受けて、法務省が制度の見直しを行いました。

2025年10月1日から、受付帳に次の情報が記載されなくなります:

• 登記の目的(例:所有権移転、抵当権抹消など)

• 不動産の所在地(住所・地番・家屋番号など)

つまり、今後わかるのは「いつ、何か登記がされた」という事実だけ。

受付帳を見ても、次のような情報しか載らなくなります:

■ 受付年月日:2025年11月5日

■ 受付番号:第1234号

どんな登記だったのか(目的)? → わからない

どの土地・建物だったのか(所在地)? → わからない

相続か売買か(原因)? → もともと受付帳には原則載っていない

なぜこの変更が必要だったのか?

登記は「公示制度」です。つまり、一定の情報を社会に示すことで、

取引の安全性を保つために作られています。

しかしその仕組みが、

個人の財産や家族の事情を知らない人にも広く知られてしまう結果を生み、

営業や詐欺の温床になるという事態も起きていました。

今回の変更は、

「公示の必要性」と「個人情報保護」のバランスをとるための第一歩です。

💬 最後に

登記や相続は、一人ひとりにとってとても大事な手続きです。

それが他人の目にさらされることなく、安心して進められる環境がようやく整いつつあります。

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「後見制度を使えばいい」と言う人が知らない、“できない”と認めるまでの葛藤 

自分の意思で契約を交わし、手続きを進めようとしても、 支援者の同行や代行があっただけで、
「判断能力があるのか」「後見制度を使うべきでは」
と、当然のように言われる社会になっています。

認知症と診断されたわけではなくても、
誰かが代わって動くと、
「疑わしい」と見なされてしまうのです。

確かに、後見制度を利用することで社会的な信用や取引の円滑さが得られる場面はあります。
しかし、実際に制度を利用するまでには、
想像以上に長く、繊細なプロセスが存在します。

社会にどれだけ制度を勧める空気があったとしても、
認知症の自覚がない方に、
「あなたは判断能力がないから、後見制度を使いましょう」とは決して言えません。

信頼関係を築き、雑談を重ねながら、
少しずつ「病院に行ってみましょうか」と提案する。
それに付き添い、診察を受け、
ご本人自身の申し出によって診断につなげる。

そこからさらに、「自分は認知症である」と受け入れてもらい、
ご本人が「判断能力に限界があるかもしれない」と自認して初めて、
「財産の管理を他者に委ねる制度」を納得して受け入れてもらうことができる。

そのプロセスには、数ヶ月どころか、数年かかることもあります。
そしてその間にも、日常生活の支援や制度の利用手続きなど、
多くの困難が生じるため、周囲のサポートが不可欠です。

本人の尊厳を守りながら後見制度にたどり着くまでに、
どれだけの時間と心の折り合いが必要なのか。

「後見制度を使えばいい」と言う前に、
そこに至るまでの現実と向き合う視点が、
今、社会に求められているのではないでしょうか。

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AIに代替される前に―士業の価値とは

AIが示した「知識だけでは足りない」という現実

近年、「AIに最も代替される職業」としてしばしば税理士が挙げられる。
定型的な記帳業務、計算、申告――こうした作業がAIに置き換わるという指摘は、技術的には確かにそうだろうと納得する。

制度や法知識は、いまや誰でも検索できる時代だ。
税法も民法も登記制度も、AIに尋ねれば多くのことがわかる。
だが、情報そのものでは人は救われない。


知識ではなく、届け方が問われる

本当に必要なのは、「誰に」「どの情報を」届けるかという判断である。
たとえば、同じ制度でも、脱税を考えている人に提供すれば犯罪を生み、
生活に困っている人に提供すれば、人を救うことになる。

制度の背景、状況の文脈、当事者の置かれた立場――
それらを踏まえた上で、その人にとって必要な情報を、必要なタイミングで、責任ある形で届ける。
それは、士業が士業たる所以の、高度な倫理感が問われる判断である。

そしてその倫理観は、自分の名前で実務をこなしてこそ、初めて身に付いていくものである。


「補助者丸投げ構造」が士業を劣化させる

昔から、どの士業にも見られるのが、
補助者が制度の説明や判断を行い、資格者は補助者を管理する者として後方に控えるという体制だ。
それは問題視されながらも、常に一定数存在してきた。

彼らは、資格制度が保障してくれる信頼や特権を利用し、
士業を“看板”として使いながら、士業の仕事で最も収益性が低い相談対応業務を無資格の人材に任せてコストを下げる。
そして、量をこなすことで法人を大規模化してきた。

効率性と収益性が最優先され、倫理や説明責任は後景に追いやられる構造である。

彼らは、資格制度を“利用するだけ”の発想に立ち、
自らの法人の無資格者を「並の同業者よりも知識と実務経験がある」とうそぶき、
依頼者の対応を丸投げしているのが現状だ。


自分の名前を出して初めて芽生える倫理観

しかし、補助者の経験がある身からすれば明らかだ。
いくら実務経験を積んだところで、雇い主である資格者を盾に、その資格者の名前――すなわち他人の名前で仕事をしている補助者に、士業としての倫理観が育つことは決してない。

どの士業も、資格を登録して初めて「自分の名前」で業務を行ったとき、
誰もが目が覚めるような強烈な緊張感を味わうはずだ。

その後も、何度となく「自分の名前で書類を作る」たびに、
また別の形で緊張と責任がのしかかってくる。

この経験を通じてこそ、倫理観は芽生え、育っていく。


士業の価値とは何か

その倫理観こそが、士業の本質であり、存在価値であり、依頼者に提供されるべきものだ。
それに気づかなければ、士業は必要とされなくなり、補助者でもできる単なる情報提供業者に落ちぶれていく。

そして、間もなくAIに置き換えられていくだろう。
今まさに、士業はその岐路に立っている。